翠玉の監察医 消されるSOS
空はボロボロの服ではなく、熊の耳がついたフード付きの可愛らしい服を着ていた。何故、碧子がこのような服を持っているのか本当に謎である。

「えへへ」

空はとても嬉しそうな顔をしている。その姿に蘭は見入ってしまった。いつも亡くなってしまった子どもとしか関わったことがなく、小さな生きている子どもと関わるのは初めてだ。

「……」

気が付けば、蘭は無意識に空にゆっくりと手を伸ばしていた。それに気付き、蘭が「申し訳ありません」と謝ると、空はキョトンと首を傾げる。

「なでなでして〜?ギュッってして〜?」

ジッと見つめられ、蘭はそっと空を抱き締めて頭を撫でる。空は嬉しそうにし、蘭は自分たちより高い体温に驚いていた。その様子を見て碧子たちが優しい目を向ける。

「さて、ご飯にしましょうか!」

碧子がそう言い、ホットプレートをテーブルの上に出す。話に夢中になって結局まだご飯は用意できていなかった。
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