翠玉の監察医 消されるSOS

「何を作るんですか？」

圭介の問いに碧子は「これを作ろうと思って」とお好み焼き粉を取り出す。「お好み焼き！」とアーサーとゼルダが目を輝かせた｡

「お好み焼き？」

空は首を傾げる。その食べ物の名前を聞くこと自体、初めてのようだ。空がどれだけきちんとした食事を与えられていないかはっきりとわかり、圭介たちの表情が暗くなる。蘭も純粋な目をする空から少し目を逸らした。

「とってもおいしいのよ｡早速作っていきましょう」

碧子が明るく言い、アーサーが「空はお好み焼きに何を入れたい？イカ？豚肉？」と訊ね、空は「イカさん！」と楽しそうに具材を選び始めた。

「じゃあ俺が焼いていくよ」とマルティン。

「お皿用意するわね」とゼルダ。

「飲み物用意します！」と圭介。

蘭も素早く動いてお好み焼き作りを手伝っていく。あっという間に全員分のお好み焼きが完成した。

「おいしい……！」

目をとろけさせながら食べる空の姿に、誰もが箸を止めた。お好み焼きを喜んでくれて嬉しいという気持ちと、こんな可愛い子どもが虐待されているなんてという悲しみが渦巻いていく。