翠玉の監察医 消されるSOS

「すぐに泣きやがって。これだからガキは嫌いなんだよ！」

「お前なんて外を歩いてれば親切な人が泊めてくれんだろ？出てけよ」

暴言と空の泣き声が盗聴器からは聞こえ、蘭たちは辛そうな顔を互いに見せ合う。時々、盗聴器からは空を叩くような音も聞こえていた。

「でも、叩く音はしてもあんなひどい怪我になるような暴力は行われていないな……」

マルティンがそう言い、圭介が「積み重ねでできた傷だったとか？」と訊ねる。しかし、あの傷はただ叩いただけではできないと遺体と何度も向き合ってきた蘭たちは一瞬でわかった。

今日も空は追い出された。盗聴器からは「助けて」の声が聞こえてくる。アーサーが「迎えに行ってきます」とコートを羽織って出て行った。数分後には空が泣きそうな目をしてアーサーに手を引かれてやって来る。

そんな日々が続き、「証拠も集まったことですし、そろそろ桜木刑事に相談しましょう」と碧子が言っていた刹那、盗聴器からガチャリと玄関のドアが開く音がした。