翠玉の監察医 消されるSOS

ドスドスと今までより大きな足音に、空の怯える声が入る。

「今までと何かが違います」

蘭がそう言った刹那、「おいガキ、久しぶりだなぁ｡たっぷり可愛がってやるよ」と男性の声が入り込んだ。その刹那、ゴンッと鈍い音が響く。

「いっ、痛い！痛いよぉぉぉ！！」

空が悲鳴を上げ、「殴っただけなのに大袈裟」と真希の嘲笑う声が聞こえてきた。

「そうか。男に暴行されたから……！」

圭介が顔を真っ青にする。成人男性が子どもに手を挙げたら下手をすれば殺人事件に発展しかねない。蘭はすぐに立ち上がった。

「桜木刑事を呼んでください。私は空さんを助けに行きます」

碧子たちの返事も聞かず、蘭は法医学研究所の部屋を飛び出していく。走ることは得意だ。どんどんスピードを上げ、蘭は夜の道を駆けていく。

「か、神楽さん！！待ってください！！」

背後から聞こえてきた圭介の声に、蘭は驚くことはなかった。ただ「危険です！深森さんは研究所に戻ってください」と振り向くことなく言う。