翠玉の監察医 消されるSOS
「わかりました。じゃあ卵を三つ割ってください。俺は鶏肉と玉ねぎを切りますから」

「了解しました」

夕食はオムライスをするらしい。卵を割り終えた蘭が圭介を見ると、彼はのんびりと鶏肉を切っている最中だった。

「料理を素早く作るってできないんですよね。家にいるからだと思うんですけど」

「なら私が玉ねぎを切ります」

圭介の隣で蘭は玉ねぎを切り始める。その早さはまるで一流のシェフのようだ。早く切っているというのに玉ねぎの大きさは揃っている。

「すごいですね、神楽さん!シェフみたいだ」

「ありがとうございます」

圭介が鶏肉を切り終わる頃には、蘭は野菜スープの具材も切り終えており、水を鍋に入れて火にかけているところだった。

「神楽さん、いい奥さんになれますね」

圭介の言葉に蘭は手を止める。思い出すのは自身の過去のことだ。圭介たちのように自分の手は綺麗ではない。すでに何人もの人の血で汚れてしまっている。
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