翠玉の監察医 消されるSOS

「確かに狭いわね。ということは、この子は冠動脈の内側が狭くなって血液が流れにくくなる狭心症を発症して亡くなったってことになるわね」

「突然死は高齢者だけでなく、若い人にも起こります。重篤な症状が起こってもその病気にかかっているということを知らなかったというケースは少なくありません」

蘭はそう言い、ご遺体を見つめる。まだ八歳になったばかりだというのに命が消えた。これからもっと楽しいことがあったはずだというのに……。

死因がわかったのでご遺族に遺体は返すことになった。死因を蘭が伝えた時、「気付いてあげられなくてごめんね」とご遺族は泣き崩れ、棺に入った息子の手を握り締めていた。

「突然死はいつ起こるかわかりません。安静にしている状態でも起こるケースもあります。誰のせいでもありません」

蘭はそう言ったものの、二人はずっと謝りながら泣き続ける。蘭の胸がギュッと痛んだ。



解剖が終わり、蘭たちは報告書を書いていた。その時、圭介が「子どもの解剖って辛いですね」と呟く。