トラップ教室
仕方なく自分から声をかけた。


「どうしたの?」


自分からクラスメートに話しかけるのは久しぶりなことだから、声が裏返ってしまった。


緊張して、喉が乾いてくる。


「あの、えっと……」


美久はしどろもどろになりながらも、あたしが持っているスマホに視線を向けた。


「ス、スマホでなにを見ているの?」


その質問に合点がいった。


美久はあたしではなく、スマホでなにをしているのかが気になっただけなのだ。


「マンガだよ」


あたしは簡潔答えた。


すると美久は嬉しそうに表情をほころばせた。


どうやら美久も読んでいるマンガだったみたいだ。


こうしてクラスメートとどうでもいいような会話をするのは本当に久しぶりのことで、あたしの心臓は終始ドキドキしっぱなしだった。
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