トラップ教室
勝手に動いては危ないと思って声をかけても遅かった。


ミチルは狭くなっている通路を走りだしていた。


けれどうまく走ることができず、机に体のあちこちをぶつけている。


「ミチル、危ないぞ!」


太一の声に一瞬ミチルが歩調を緩めた。


その時だった。


ミチルがぶつかった机の上で花瓶がグラリと揺れていた。


しかし、ミチルはそれに気がつかずに、床をジッと見つめている。


その間に花瓶は倒れ、水がミチルの手元にかかった。


「あっ」


そこでようやく花瓶が倒れたことに気がついたミチルが、水のかかった右手を確認した。


「ミチル、大丈夫?」


やっと追いついて声をかけると、ミチルは頷いた。


どうやら怪我はないようで、ホッと胸をなでおろした。


「ねぇ、これ見て」


ミチルが床を指さして言う。


視線をそちらへ移動させると、床には教科書やノート、文房具が散乱しているのだ。


「なにこれ」


あたしは思わずしかめっ面をする。
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