トラップ教室
俺の言葉に太一は意外そうな表情を浮かべる。


「俺から見れば大祐なんて、なんでもできるように見えるのにもったいない」


「ただ力が強いだけだ」


「それだって立派な能力だよ。たとえばレスリングとか、ボクシングとか、色々な道が開けてくるだろ?」


そんなことを言われたのは初めての経験で、なんと返事をすればいいかわからなかった。


みんな俺の力が強いことは知っている。


知っているからこそ、少し怖いと思って近づいてこない。


今の友人たちはみんな昔からの知り合いだから大丈夫だけど、新しい友人はなかなかできないのが現状だった。


「太一、お前の小説を読んでみたいな」


「え!?」


突然の申し出に太一は声を上げ、そして恥ずかしがるようにうつむいた。


「あまり、人に読ませたことはないのか?」


「中学の時は文芸クラブに入ってたんだけど、高校では文芸部がないから、なかなか見せる機会がないんだよ」


「そうか。でも、それはもったいないな」
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