トラップ教室
俺の言葉に太一は小さく頷いた。


「それは、俺も思ってるんだ。せっかく書いたのに誰にも読ませられないんじゃつまらない。でも、読んでもらって面白くないって言われたら辛いし……」


「それなら俺が読んでやる」


俺の言葉に太一はまた笑顔を浮かべた。


「大祐は読書をするの?」


「いや、全然」


俺は素直に左右に首を振って答えた。


「それでも、太一の書く小説は読んでみたいと思う」


「そっか……」


太一はしばらく思案するように考えて、そしてパッと顔をあげた。


土がついたままの顔でニカッと笑う。


「わかった。今度学校へ持っていくよ。でも、他の誰にも読ませないでよ」


「あぁ。約束する」
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