トラップ教室
そして、俺は太一の小説を読ませてもらった。


少年少女が冒険をするストーリーで、時々クラスメートによく似たキャラクターが出てくる。


少年少女は冒険を続けながら、自分たちの過去と向き合い、自分たちが抱えている問題を解決していく。


正直、俺は小説なんて全然興味がなかった。


読んだこともほとんどなかった。


国語の教科書が精いっぱいだった。


でも……太一の書いた小説は、ほんの1日で読んでしまったのだ。


「とても面白かった」


小説を読んだ翌日、俺は率直な感想を太一へ伝えた。


正直、感想の伝え方だって俺にはよくわからない。


でもとにかく面白かったのだ。


休まずに一気に読んでしまったのだ。


それを伝えた。


最初緊張した表情だった太一は、俺の感想を聞いて安心したように笑った。


「お前は絶対に小説家になれる。俺が保証する」


胸を張り、自信満々に言うと、太一はおかしそうに声を上げて笑ったのだった。
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