トラップ教室
しかし彼はそれが自分に向けられたものだとは思わず、颯爽と歩き続けている。


うん。


これは間違いなく優香の好みのタイプだった。


優香が集めている少女マンガには必ずこういうキャラクターが出てくるのを、あたしは知っているから。


でも……。


あたしの目は隣の1年生にくぎ付けになっていた。


その人は中条先輩に負けず劣らずのイケメンで、先輩の話に熱心に耳を傾ける姿はとても綺麗だった。


同じ1年生であんな人がいたんだ……。


あたしと優香はぼーっと突っ立ったまま2人を見つめる。


その熱っぽい視線に気がついたのか、1年生の彼と視線がぶつかった。


ハッと我に返り、慌てて優香の手を引いて2人のために道を開けた。


すると1年生の方はなんだか複雑そうな表情で会釈してくれた。
< 160 / 273 >

この作品をシェア

pagetop