トラップ教室
「それって誰!?」


優香が叫ぶように聞く。


響は悔しそうな表情を浮かべて左右に首を振った。


「わからない。覆面をかぶってたんだ」


あたしは響の言葉に頷いた。


ここまで用意する犯人がむやみに顔をさらすわけがなかった。


「でも、これって本当に人間の仕業なのか?」


そう言ったのは秀だった。


「どういう意味だ?」


響は目を丸くして聞き返す。


「とても人間では考えられないことが起きてる。さっきの放送室の件もそうだ」


「確かに……」


「今は犯人のことより、鍵を手に入れるのが先だよ」


あたしは自分の足元を見て3人へ言った。


水が足首まで迫ってきているところだった。


この広い教室内でも、これほどのスピードで水が増えて行けばあっという間にあたしたちの命は奪われてしまうだろう。


優香が焦った様子で宝箱に近づいた。


「机の中にもロッカーにもなにもなかった。この箱を開けるべきなんだと思う」


「フェイクじゃないってこと?」


「うん」


あたしの問いかけに優香は真剣な表情で頷く。
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