トラップ教室
それを見た瞬間、あたしは無意識のうちに動き出していた。


黒板に書かれている数式はきっとフェイクだ。


こんな単純な問題で宝箱が開くはずがない。


夏海だってきっと気がついている。


けれど入力しないと先へ進むことができないから、自分が犠牲になろうとしているのだ。


あたしは両手で夏海を体を強く押した。


ダメ。


それをするのはあたしの役目だよ。


そう思った瞬間自分のやりたいことが明確に見えた。


やっと、わかった。


あたしは人の手助けがしたいのだ。


お年寄りとか子供とか関係ない。


ただ、人のためになる仕事がしたいんだ。


そう理解した瞬間嬉しさがこみ上げてきた。


梓もミチルも、これに気がついていたということなんだ。


そっか。


そうだね。


それがあたしの望んだことだよね。
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