トラップ教室
あたしは水が太ももを覆い隠そうとしているのを感じながら、必死に頭を働かせた。


せっかく優香がヒントを残してくれたのだ。


これを無駄にするわけにはいかない。


崩れ落ちてしまいそうな精神を奮い立たせて、ビニールの文字を何度も読み直す。


「誕生日……誕生日……」


ぶつぶつと口の中で呟くけれど、やっぱりわからない。


そんな中、響が真剣な表情でうつむいているのが見えた。


なにかを深く考え込んでいるようだ。


「響、なにかわかりそう?」


聞くと、響はハッと息を飲んで顔をあげた。


「いや……特には……」


そう言って左右に首を振る顔に、どこか焦りの色が見えている。


あたしはジャブジャブと水をかき分けながら響の隣に立った。


「なにか気になることがあるの?」


「いや……」
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