トラップ教室
「そりゃ、俺よりお前のほうがずっといいだろ」


「そんなことはないよ」


響の言葉に俺は拾った空き缶を袋に入れて顔をあげた。


響は真剣な表情で俺を見ている。


「秀にはいいところが沢山ある。俺は秀が羨ましいよ」


そう言って響はゴミ集めに戻っていく。


俺のことが羨ましい?


俺のどこが?


瞬きをして響の後ろ姿を見つめる。


「変なヤツ」


そう呟いて、俺はごみ拾いに戻ったのだった。


でも、響のその一言があってから、なんとなく俺の中で変化するものがあった。


俺が羨ましいと感じている響が、俺のことを羨んでいる。


納得できることじゃなかったけれど、でも響が嘘をついているようにも見えなかった。


「勉強してくる」


リビングでドラマを見ていた母親に声をかけて立ち上がる。


「またゲーム? たまにはちゃんと勉強しなさいよ」


いつものノリで注意をする母親の声を後ろに聞きながら、リビングを出る。


ドアを閉めたところで「え、今勉強って言った!?」と、驚きの声が聞こえてきた。
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