トラップ教室
「ありがとう先生。なんかよくわかんなかったけど、またね!」


あたしは早口でそう言うと、慌てて職員室を出たのだった。


それからほんの数時間後のことだった。


「ねぇ佐竹の噂聞いた?」


放課後になり、ほとんどの生徒たちが教室から出ていった時、偶然マリの声が聞こえてきてあたしは耳をそばだてた。


「なになに?」


美久が興味津々に聞き返している。


あたしはゆっくりと鞄に教科書を入れていく。


「佐竹って、ずっとイジメられてたらしいよ?」


「え? 学生時代ってこと?」


「そうみたい!」


マリの言葉に美久が「うわぁ」と、嫌そうな声を上げる。


「それが、なんで教師になんてなったんだろうね?」


「自分みたいな生徒を少しでも減らすため。って言ってたらしいよ?」


どこからの情報だろうか?


本当のことだろうか?
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