トラップ教室
「それでさ、少し頼みたいことがあるんだ」


光平の声色はあくまでも優しかった。


こんな状況でなければ、早紀でもきっと断ることができただろう。


「頼みたいこと?」


早紀は顔を上げて聞き返す。


「あぁ。今から佐竹に会いに行って、学校の近くの用水路に小学生が流されたって、伝えてきてほしいんだ」


「え?」


早紀はさすがに目を見開いた。


あたしは光平の考えが読み取れず、瞬きを繰り返す。


「このクラスで佐竹が信用するのは、たぶん早紀だけだから」


確かにそのとおりだと思った。


他のクラスメートたちはあからさまに佐竹イジメに加担しすぎてしまった。


何を言っても信用してくれないだろう。
< 257 / 273 >

この作品をシェア

pagetop