トラップ教室
早紀がひっくひっくと子供のようにしゃくりあげはじめた。


「いい加減泣くのはやめろよ!!」


光平の怒鳴り声に早紀がビクッと体を震わせる。


驚いた拍子に涙が引っ込んだようで、今度は両手で自分の体を抱きしめ、うつむいた。


「このままじゃ外に出られない」


凌が黒板の前をうろついて呟く。


あたしは灰色の袋へ視線を向けた。


袋の中では響がまだもがき苦しんでいる。


「助けてくれ! ここだ!」


時々聞こえてくる声は悲痛なものばかりだ。


聞いているのもつらくなってくる。


「どうにかして、ピアノ線を無くせないかな?」


「どうにかしてって?」


凌の質問にあたしは弾かれたように机の中を確認した。


ここが誰の机か知らないけれど、今は気にしている暇もない。


「なにを探してんだ」


光平があたしを見下ろして聞く。


「ハサミだよ。なにかのトラップだったとしても、切っちゃえば意味はないでしょう!?」
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