トラップ教室
☆☆☆

ニュース番組で佐竹の件で進展があったと言っていたが、本人が見つかったとは言われていなかった。


ただ、用水路の中から佐竹が日ごろ使っていたメモ帳が発見されたのだ。


水で滲んだ手帳に書かれていた文字を解読すると、E組の生徒の名前が読み取れたという。


それぞれの生徒の特長といい部分。


それに自分自身がどう向き合えばいいかということ。


佐竹は生徒ひとりひとりをちゃんと見ていたのだ。


数日後。


あたしと響はあの用水路へ来ていた。


奥底になにかが引っ掛かっているのが見つかったと、近所の人から伝えられたのだ。


急いでその場へ向かうと、警察官がビニールシートで周辺を覆い隠していた。


でも、一瞬視界の端で見えたものがあった。


白い担架に乗せられている男性。


その男性の腕がダラリと垂れ下がる。


そこには黒色の腕時計が付けられていた。


「佐竹の腕時計だ」


隣りに立つ響が、小さな声でそう呟いた。
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