トラップ教室
確証はどこにもなかった。


ピアノ線を切ることでなにか起こるかもしれない。


でも一縷の望みを捨てたくはなかった。


あたしの言葉に他の3人も机の中を調べ始めた。


光平は乱暴に机を横倒しに倒していく。


「くそっ! なにも出て来ねぇ!」


どれだけ机を確認してもその中身は空っぽだった。


普段は教科書やノートが入っているはずなのに、これもこの状況を仕組んだやつの仕業かもしれない。


期待は簡単に打ち砕かれて、その場に座り込んでしまいそうになった。


キツク下唇を噛みしめてどうにか立っていることができた。


教室からは出られない。


ピアノ線があるから響を助けることもできない。


じゃあどうすればいいの?


あたしたちはなんのためにここにいるの?


途方にくれそうになった時だった。


「お前、行けよ」


仁王立ちをしていた光平が早紀へ向けてそう言ったのだ。


あたしは驚いて目を見開く。
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