トラップ教室
なんで?


こんなことってある?


「くそ、走るぞ!」


響があたしの手を掴んでかけだそうとした、その瞬間……。


響の体が突然用水路へと引き込まれていたのだ。


「うわぁ!」


響の悲鳴。


咄嗟に手を伸ばすあたし。


その時あたしは確かに見た。


用水路から伸びた青白い手が響の体を引きずりこむのを。


そしてその腕には黒い腕時計が付けられていたのを。


「あ……」


唖然として動くことができなかった。


立ちあがって、逃げないといけないのに、金縛りにあったかのように、なにもできなかった。


やがて響は頭まで用水路に浸かり、その姿が見えなくなった。
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