トラップ教室
「え……」


早紀はおどおどと助けを求めて視線を泳がせる。


「この中じゃお前が一番役立たずだろ」


「おい、やめろよ」


凌が見かねて2人の間に入った。


「そうだよ光平」


あたしは小さな声で凌に同意した。


瞬間、光平から睨まれてひるんでしまった。


「お前、ここにきてからずっと泣いてたよな。人の後ろ付いて回るばっかりでよ。たまにはお前が前を歩けよ!」


光平が近くにあった椅子を蹴りあげる。


大きな音に驚き、早紀はまた泣きそうな顔になってしまう。


「こんな状況なんだ。誰だって不安になって泣きたくもなるだろ」


「なんだよ凌。やけにこいつのこと庇うよな?」


「当たり前だろ。クラスメートだ」


凌の言葉に光平は笑い声をあげた。


「クラスメート? お前だって知ってんだろ。こいつが1人ハブられてんのをよ!」


あたしは咄嗟に早紀から視線をそらせた。


E組の中で一番地味で目立たない早紀は、どこのグループにも入ることがなかった。
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