トラップ教室
それでも、あたしは光平を止めることができなかった。


あたしは死にたくない。


それだけだった。


「いい加減にしろよ!」


凌が大きな声をあげたその時だった。


早紀が一歩前へ出たのだ。


ピアノ線へと一歩近づく。


あたしはハッとして息を飲んだ。


早紀の目の前には沢山はられたピアノ線がある。


それをよけて歩くことは不可能だった。


「あたしは……みんなと馴染めなくて、でも……E組のことは好きだった」


早紀が静かに言葉を紡ぐ。


それはまるで、遺書のようだった。


「好きだったよ……」


早紀の頬に涙がこぼれた。


そしてもう一歩を踏み出したのだ。
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