トラップ教室
しかし、わからないのはその近くに転がっているものだった。


赤黒く変色した何かから、シュウシュウと音が出て煙が立ち上っている。


それを見た瞬間、刺激臭が鼻にツンッと入ってきた。


その匂いに一瞬にして激しい吐き気がこみ上げてくる。


あたしは口と鼻を手で覆い隠してそっと立ちあがった。


立ちあがって確認してみると、赤黒い塊が女子生徒の制服を着ているのがわかった。


よく見ると、スカートの下には2本の足が見えている。


白くて細い足にはかれているシューズにはマジックで小野と書かれている。


「嘘でしょ」


知らぬ間にそう口走っていた。


ついさっきまでそこに立っていた早紀が、今は赤黒い塊になっているのだ。


顔は完全に消失してしまい、片口までドロドロに溶けて煙が出ている。


シューズに名前が書かれていなければ、誰だかわからなくなっているのだ。


「硫酸だ」


光平が小さな声で呟いた。


ピアノ線に触れた瞬間、バケツに入った硫酸が早紀の頭上に落下してきたらしい。


そう理解するまでに少し時間がかかった。
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