トラップ教室
「本が好きで何が悪いんだよ。暗いとか、決めつけるなよ」


凌がハッキリとした声で梓を被弾する。


梓は一瞬ひるんだ表情を浮かべ、それから「はいはい、わかりました」と頷いた。


「凌はほんっと早紀のことが抱き好きなんだから」


呆れた声で言い、教室を出ていく梓。


あたしはその後ろ姿を見送ってホッと安堵の息を吐きだした。


梓はあたしと凌の関係をからかったりもしない。


それはいいことだった。


でも……今日もこうして凌に助けられることで、他の女子たちからの痛い視線を感じるのだ。


凌も梓も気がつかない。


自分たちのしている行動が、この後あたしにどのようにして降りかかってくるのかを……。
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