トラップ教室
そう言いたかったけれど、光平に痛いほど腕を掴まれて言葉が出なかった。


見ると鋭い視線が突き刺さる。


余計なことを言うな。


威圧的な雰囲気で、そう言われているようなものだった。


あたしは息を止めて凌を見つめた。


凌はまた前を向き、ピアノ線へ向けてゆっくりと歩き始めている。


もうやめて!


こんなことしてどうなるの!?


「……っ!」


言葉が出かかり、喉に引っかかる。


外へ出るためには誰かが前に進むしかない。


それしか道はない。


それが、本能的にすでに理解していたことだった。


やがて凌の体がピアノ線に触れた。


「あああああああ!」


凌は雄たけびを上げながら力いっぱい足を前に進める。


沢山のピアノ線が邪魔をする中、少しでも前に進もうとする。


「響! 俺だ! 凌だ!」


「俺はここだ! ここにいる!」


凌と響の悲痛な叫びが教室内にこだまする。
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