トラップ教室
その様子を想像した瞬間、心臓がドクンッと跳ねたのがわかった。


な、なんだこの感じ。


思わず自分の胸に手を当てる。


さっきよりも少し早くなった鼓動に、顔がカッと熱くなるのを感じる。


見られたくなくて、咄嗟に自分の席へと向かった。


机の中を確認するとやっぱりここにスマホを忘れていた。


机の中に手を突っ込み、スマホを取り出す。


落ちつけ俺。


どうしたって言うんだよ。


この感覚は何度か味わったことのあるものだった。


恋に落ちた瞬間のトキメキだ。


そう理解していたのに、拒否する自分がいる。


相手は早紀だぞ。


地味で冴えなくて、本ばっかり読んでいる早紀だ。


花の世話をしている姿が少し可愛く見えただけで、何かの間違いだ。


自分自身にそう言い聞かせる。


「じゃ、またな」


俺はぶっきらぼうに早紀に声をかけると、慌てて教室を出たのだった。
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