トラップ教室
キツク閉じた目。


食いしばった歯。


痛いほど握り締めた鍵。


ほんの数秒間、あたしはそのままの体勢動くことができなかった。


どこからなにが飛んでくるかわからない。


あるいは早紀のように硫酸を被るか、凌のように串刺しになるか……。


残酷な情景が次々に思い出されてくる中、あたしは自分の身になにも起きないことを感じてそっと目を開けた。


周囲には先ほどと同じ惨状が広がっているが、自分の身に危害が加わる気配はない。


ひとまず安堵して灰色の袋に歩み寄った。


袋の中からは相変わらず響の声で「頼む! 早く助けてくれ!」と、繰り返されている。


それが響のものではないとすでにわかっていたが、教室から出るためには鍵を使うしかない。
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