トラップ教室
呟いてから、自分の考えがまとまっていく。


「あのスイッチ、電流が流れてたんだ!」


雄大が触れたのは壁のスイッチだけだ。


それ以外の教室のものには触れていないから、まず間違いなさそうだ。


「どうすればいいの!?」


マリが涙目になる。


「どうにもできないよ。触れられないんだもん!」


美久が叫ぶように返事をする。


そう、なにもできない。


雄大に触れたらこちらまで感電してしまうのだから。


俺たちはただ茫然と立ち尽くして、雄大を見つめていることしかできなかった。


やがて雄大は痙攣しながらその場に崩れおちた。


それでもビクビクと、魚のように何度も跳ねる。


その体全体から煙が上がっていて、人体の焦げる匂いに鼻が曲がってしまいそうになる。


マリと美久はその場でえずきはじめていた。


それでも雄大はまだ死んでいなかった。


濁った目をこちらへ向けて、助けを求めるように手を伸ばしてくる。


その手も焦げて黒く変色してしまっている。


「秀……」


雄大の呼ばれてビクリと体をはねさせた。


手を握ってやらなきゃ。


大丈夫だからなって、安心させてやらなきゃ。
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