トラップ教室
「ダメだ。さっき机の中を調べてみたけど、空っぽだった」


俺は左右に首を振って返事をした。


このB組の教室内には机と椅子、それにロッカーと黒電話とフィルムという、おかしなものしか存在していない。


普段みんなが使っているような文房具も教科書やノート類も、なにもないのだ。


きっとこれを仕掛けた犯人が使えそうなものは全部排除してしまったのだろう。


その徹底ぶりに心は沈み込んでいく。


きっと相手は1人や2人ではなく、もっと複数人だろう。


そんな人間が考えたことから逃れることができるのか、自信がなくなっていく。


「どうするべきかわからないけど、この電話を使って外部と連絡が取れないかな?」


マリがふと思いついたように言った。


「この電話を使うの?」


美久が驚いた声を上げる。


「これは犯人が用意したものだぞ?」


「でも、もうそれしかできることってないじゃん」


マリの言葉に俺は黙り込んでしまった。


そうかもしれない。


この状況の中でできることと言えば、犯人が用意したいかにも異質なこの電話を使うこと……。
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