トラップ教室
マリがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてきた。


なにか覚悟を決めたように黒電話へと近づいて行く。


「ちょっとマリ、やめなよ!」


美久がマリの腕を掴んで引き止まる。


しかし、マリはその手をそっと離したのだ。


「大丈夫。これを使えば、きっと前に進めるから」


マリはなにか確信めいたものを感じているようで、美久の声に耳を貸す様子はない。


美久はマリから後ずさりをして、そのまま壁にぶつかるとズルズルと座り込んでしまった。


次になにが起こるのか想像して、震え始めている。


「美久、きっと大丈夫だから」


俺が声をかけても美久の顔色は悪くなるばかりだ。


このままずっとこの教室にればきっと3人ともおかしくなってしまう。


教室から出れたとしても、その時に狂っていては意味がない。


「マリ、警察にかけるんだぞ?」


「わかってる」


マリは頷き、受話器を握り締めた。


その手は小刻みに震えている。


こんなことをするのは誰だって怖い。


だけど誰かがやらなきゃいけない。


「なぁマリ、俺が電話しようか」
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