トラップ教室
大きく息を吸い込み、吐き出すと同時に言った。


一瞬マリは大きく目を見開いて俺を見つめてきた。


そしてフッとやわらかく微笑む。


「ううん。あたしがする」


左右に首を振って答えるマリ。


「でも……」


「これから先も男手は必要になると思う。だから、ここはあたしが行く」


マリのしっかりとした返事に俺はなにも言えなくなってしまった。


これから先も男手は必要。


それって、ここで自分が犠牲になることで男手を残しておくことができる。


ってことだよな……。


考える暇もなく、マリは受話器を上げていた。
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