リアル彼氏
「迷惑してたんじゃないの?」


その質問にあたしは「あぁ……」と、口を閉じてしまった。


確かにマリナの自慢には飽き飽きしていたし、迷惑だと思っていたからだ。


「でもさ、さすがにみんなやりすぎじゃない?」


空気を壊さないよう、明るい口調で言った。


それでも安藤さんは険しい表情をしたままだ。


「あの子、他にも沢山噂があるんだよ?」


「噂?」


「そう。男癖が悪いのはもちろんだけど、美弥ちゃんの悪口も言ってたし」


安藤さんの言葉にあたしは唖然としてしまった。


マリナがあたしの悪口を?


マリナへのメッセージを作るために動かしていた指先が止まる。


でも、マリナならあり得るかも知れない。


あたしは1年生のころからマリナと一緒にいるのだ。


だいたいの性格はわかっているつもりだった。


「……そうなんだ」


「気分を悪くしたならごめんね。でも、あたしは嘘は言ってないよ?」


安藤さんの言葉に頷く。


確かに、そうなんだろう。


「もういいよ。お弁当を食べよう」


あたしは自分の感情を押し殺してそう言ったのだった。
< 114 / 190 >

この作品をシェア

pagetop