リアル彼氏
☆☆☆

この日の授業はほとんど身に入らなかった。


貴也のことはもちろんだけれど、マリナのことも気になった。


弘志君のことなんて無視していればいいのに、どうしてあの時かばったんだろう。


もしかして弘志君って、あたしが考えているよりもいい人なの?


そんなことばかりが浮かんでは消えていく。


「美弥、今日はぼーっとしてどうかしたのか?」


休憩時間になると貴也が心配して声をかけてきてくれる。


「うん……」


あたしは曖昧に笑って頷く。


「俺、そんなに頼りない?」


「え?」


「相談くらい乗るよ?」


貴也は不安そうな顔をこちらへ向けている。


その言葉に嘘はないように見えるけれど、信用していいのかどうか、今のあたしにはわからなかった。


貴也を見ていると、ゲーム内での笑い声が蘇ってくるのだ。


あれがもし本当に貴也の実体験だとしたら?


あたしはあんなにバカにされていたことになるのだ。
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