リアル彼氏
☆☆☆

美弥の恋愛経験は皆無だった。


中学時代に好きな人はいたらしいけれど、告白なんてできるわけもなくそのまま終わってしまったらしい。


手をつないだことも、キスしたことも、もちろんそれ以上の経験もない。


そんな美弥は真っすぐで、そして必死だった。


その必死さが、残念ながらあたしには面白く感じられたのだ。


「貴也は応援団に入るんだって、美弥もやってみたらいいじゃない」


そんな助言をすると、美弥は本当に応援団に入った。


元々そんなに運動神経がいいわけでもない美弥は、付いていくのに必死だった。


「体育祭の後、貴也をデートに誘いたい」


美弥からそう相談を受けたのは体育祭の前日だった。


あたしは一瞬驚いて瞬きをした。


この子は本気でそんなことを言ってるんだろうか。


貴也と自分がつり合うとでも?


思わず笑ってしまいそうになったが、どうにか押し込めた。


きっと同じ応援団に入ったことで距離が縮まったように感じられたのだろう。
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