リアル彼氏
スマホでやる恋愛ゲームなんて興味はなかったけれど、このときある考えが浮かんだのだ。


貴也と自分の恋愛を売って、美弥にやらせればいいと。


貴也はああ見えて少し腹黒いところがある。


美弥のことを笑っていたことも。1度や2度じゃなかった。


それを利用して、貴也を幻滅させるのだ。


すごく遠回りだし、本当にそんなことができるかどうかもわからなかった。


でも、貴也に連絡を入れるとふたつ返事でOKしてくれた。


貴也はまだあたしのことが好きだからだ。


きっとあたしを取り戻すためなら、なんでもしてくれるだろう。


その後、貴也を主人公とするゲームシナリオが完成した。


「キャラクターの性格を調整させていただきます」


という連絡が来たが、それは断った。


美弥への悪口が削除されたら意味がない。


運営側は渋っていたが、それなら体験を販売しないというと、引き下がった。


そして、ゲームは完成し、サンプルをプレイした。


貴也の悪い部分がしっかりと残されたゲーム。


美弥がこれをプレイすれば、きっと自分のことだと感づくはずだ。


そうなると貴也への興味は薄れるはずだった。
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