リアル彼氏
☆☆☆

マリナは重傷だったが、奇跡的に命は助かったらしい。


その代り、もう自力で立ち上がり歩くことはできないそうだ。


貴也は毎日マリナのお見舞いに行って、泣きはらした顔で帰ってくるという。


あのマリナが要介護になったのだ。


想像するだけで大変なのはわかった。


相変わらずプライドばかり大きくて、周りに迷惑をかけているのだろう。


貴也はいずれマリナから離れていくかもしれない。


もしかしたら、その時こそあたしにとってのチャンスになるかもしれない。


1年生のころから好きだった、貴也と一緒になるチャンス……。


でも、今のあたしにはそれもどうでもよくなっていた。


だって、あたしは今……。


「何ぼーっとしてんだよ」


あたしの前で弘志君が険しい表情をしている。


椅子に拘束され、よくわからない廃墟に監禁されているあたしは左右に首をふる。


口にはガムテープが貼られているため、返事もできない。
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