リアル彼氏
「お前は俺だけ見てりゃいいんだ。わかったか?」


弘志君の乱暴な言葉に頷く。


弘志君は前々から、ペットのような女の子が欲しかったらしい。


処女をささげたあたしは、弘志君にとって恰好の相手だった。


今の情報はすべて弘志君から聞いたことだった。


弘志君はごく普通の学生生活を送りながら、あたしを調教している。


最初は家に帰りたいと泣き叫んだこともあったけれど、最近ではそれもなくなって

きた。


時々、自分がいまどこにいて、なにをしているのか分からなくなるときがある。


唯一会話をしてくれる相手である弘志君のことを、心待ちにしているときもある。


あたしの復讐は幕を閉じた。


これから先、なにをするんだっけ?


弘志君の声に耳を傾けながらあたしはぼんやりと考える。


あたしはマリナに対してなにをそんなに憎んでいたんだっけ?


貴也のどこを好きなんだっけ?


なにもかもの記憶が薄れていく。


弘志君の声が聞こえる。


あたしをののしる声が聞こえる。


あたしはだんだんと、自分が自分ではなくなっていくのを感じる。
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