リアル彼氏
ゲームの攻略サイトで得た知識なんて全部すっぽ抜けてしまう。


「ちょっと座ろうか」


貴也はそう言うと、公園に入って行った。


公園では幼稚園くらいの小さな子たちが遊んでいる。


そんな中、2人で木製のベンチに腰をおろした。


日よけの藤棚は青々と葉が生い茂っていて、涼しげだ。


「どうして急にあたしを誘ったの?」


勇気を出して聞いてみると、貴也は驚いたように目を丸くした。


「言わなかったっけ? 最近すごく楽しそうに見えて、いいなって思ったって」


それは聞いたことだった。


でも、それだけじゃなんだか納得できなかったのだ。


たったそれだけのことで、1度振った相手をデートに誘うだろうか。


首をかしげていると貴也はニッコリと優しい笑顔を見せた。


「それとも、もっと別の理由がほしい?」


意味深に聞かれて心臓がドクンッと高鳴る。


貴也の顔がグイッと近づき、互いの鼻先がくっついてしまいそうだ。
< 85 / 190 >

この作品をシェア

pagetop