リアル彼氏
「あんな子とデートするわけないだろ」


そう言って大きな声で笑う藍。


その態度に不信感が膨らんだ。


なんだろうこれ。


恋愛ゲームってこういうものだっけ?


このゲームは体験談をもとにして制作されている。


だからこういうこともあるのかもしれないけれど……。


なんだか藍のイメージが変わってしまうようなシーンだった。


このままゲームを続ける気分にもなれず、あたしは早々にスマホを閉じた。


「貴也はきっと、藍みたいなことはしないよね」


ベッドの上に寝転がったままで呟いた。


今日の藍との時間は本当に楽しかった。


藍は話し上手で、聞き上手でもあったから、会話に困ることもなかった。


時々沈黙が下りてきても、それすら心地よく感じられたのだ。


少なくても、今日の藍みたいに他の子にデートに誘われたことを笑ったりはしない。
< 96 / 190 >

この作品をシェア

pagetop