リアル彼氏
休日でも繰り返される練習。


普段あまり会話をしない相手でも、自然と距離が近くなる。


互いに指摘しあい、協力して1つのものを作り上げるのだ。


気がつけば恥ずかしがり屋だったあたしはごく普通の貴也と会話ができるようになったのだ。


「これを逃がすわけにはいかないよ」


体育祭の後、マリナはそうやってあたしの背中を押してくれたのだ。


確かに、今なら貴也とあたしの距離も近い。


もしかしたらOKしてもらえるんじゃないか?


そんな淡い期待が浮かんでくる。


こんな前向きな気持ちになれるのは、きっと今しかない。


体育祭が終わった今だからこそ、特別なんだ。


明日でも明後日でもダメ。


あたしは自分にそう言い聞かせて、昇降口から出ていこうとしていた貴也に声をかけたんだ。


「ちょっと話があるの」


それだけのセリフなのに、声が震えた。
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