副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
宇宙の前妻
翌日の朝。
涼花が目を覚ますと、宇宙はもう起きていた。
時刻は6時。
早起きな人なのだろうか?
涼花も起きてとりあえずリビングに向かった。
キッチンからお湯を沸かしている音がする。
涼花がリビングに来ると、窓から差してくる朝日を浴びながら体を動かしている宇宙がいた。
輝かしい朝日に照らされている宇宙は、とても絵になっていて体を動かしている姿はとても爽やかである。
そんな宇宙に見惚れてしまった涼花。
「宇宙さん…」
そう呟いた涼花は目の焦点が合っておらず、無意識な状態で宇宙を見ているようだ。
「ん? 」
気配に気づいて宇宙が振り向いた。
いつもとは違う穏やかな目をして宇宙を見ている涼花。
「起きたのか、おはよう」
パジャマ姿のまま歩み寄って来る宇宙を、涼花はじっと見つめていた。
「洗面所に、新しい歯ブラシとコップとタオルを置いておいた。それを使ってくれ」
「…新しい物…いいんですか? 私なんかが使って…もったいないです…」
少し目を潤ませて涼花が言った。
「…使い古しで構いませんから。…」
ん? と、涼花の顔を覗き込んだ宇宙。
なんとなく、いつもの涼花とは違う事に気づいた宇宙。
「…宇宙さん…」
スッと涼花の頬に涙が伝った…。
その涙に、宇宙は胸がズキンと痛んだ。
「…好きです…。貴方に嫌われても私…」
茫然としていた涼花が泣き出してしまった…。
宇宙は黙って涼花を抱きしめた。
「何言ってるんだ。誰が嫌いだと言った? 俺はいつも言っている。…顔なんて気にしていないと…」
宇宙の腕の中が暖かくて、涼花はギュッと抱き着いた。
と…
ズキン! と頭に激し痛みを感じて、涼花はその場に蹲った。
「どうした? 」
痛そうに頭を押さえている涼花。
そんな涼花を見ると宇宙にも痛みが伝わって来た。