副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
次なる刺客

 午後からは会議で宇宙も空斗も縛られていた。 
 秘書として一緒に涼花も参加していた。



 会議は16時過ぎまで続いて、やっと解放された。

 残りの時間で残務をこなして。


 涼花は定時で帰って行った。



 
 涼花がビルから出てくると。

 ビシッと黒いスーツにいを包んだ中年の男性が歩み寄ってきた。


 
 涼花は男性に気づいて足を止めた。

 男性は涼花に向って律儀な礼をした。

「お帰りなさいませ、お嬢様」

 そう言われると、涼花は周りの目を気にした。

「あの…ここでは、その呼び方は辞めて下さい。人目もありますので」
「申し訳ございません。昨晩は、お帰りになられませんでしたので旦那様が大変心配しておられました。さっ、どうぞお乗り下さい」


 近くに停まっているリムジンのような高級車。

 男性はその車の後部座席のドアを開けた。

 涼花は周りを気にしながら、車に乗り込んだ。

 ドアを閉めると、男は運転席に乗り込んだ。

 そのまま走って行く車。




「へぇー…。すげぇ高級車だなぁ…」


 涼花が車に乗って行くのを見ていた、営業部の篠山郷(しのやま・ごう)がいた。
 がり勉タイプの顔をしていて、分厚い眼鏡をかけている。
 背丈はそれほど高くない。
 営業成績は大変良く、新規獲得が得意である。

 
「北里さんって、お嬢様なんだ」

 遠ざかる車を郷は見送っていた。






 すっかり辺りは日が沈み夜になった頃。
 宇宙は残業を終えて帰宅していた。


 今日は空斗から実家に帰って来てくれと頼まれ、歩いていた。


「副社長」

 声をかけられ宇宙は足を止め振り向いた。


「副社長、今お帰りですか? 」


 現れたのはちょっと小太りで、メガネをかけた髪の長い女性。
 
 この女性は総務にいる小林有香(こばやし・ゆか)。
 重乃と仲良くつるんでいる女子社員である。
 2年前に結婚したが、旦那の浮気が理由で離婚した。
 現在1歳の子供を引き取り再婚相手を探している。

 社内の男性社員にも言い寄っているが、体系と性格からみんな逃げてしまうようだ。
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