副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
「ん? どうした? 宇宙」
真っ青な顔をして振り向いた宇宙を見て、空斗は驚いていた。
「お・おかしな奴がいて…」
ドン! ドン!
社長室のドアを強くたたく音に、宇宙はビクッとした。
「なんだ? 誰なんだ? 」
空斗は立ち上がりドアを開けた。
すると上半身下着だけの姿で、美也が立っていた。
「き、君は…営業部の人だね? 」
「春山美也です。社長! 副社長が、いきなり私を襲って来たんです! 」
「え? 」
「副社長に用があって行ったら、突然襲われて…私…こんな格好にされてしまって…」
わざとらしく泣き出した美也。
空斗は呆れた目をして宇宙を見た。
宇宙も呆れてしまい言葉を失っているようだ。
「春山さん。とりあえず、事情は聴いたから。事実確認をさせてもらう。今日はもう、帰った方がいいから。このまま退社して構わないよ」
「こんな格好で帰れと言うのですか? 」
泣き顔で空斗を見る美也。
「どうかされたのですか? 」
資料をコピーに行っていた涼花が帰って来た。
美也は涼花の声に反応して、ギロっと睨んだ。
「北里さん! あなたって酷い人よね。私と副社長の仲を引き裂こうとしているのでしょう? 」
「え? 」
涼花は何を言われているのか分からなかったが、美也の格好を見てサッとジャケットを脱いで羽織らせた。
ムッとした顔を向ける美也だが。
涼花のジャケットはブランド物で、高級素材だった。
それを見ると美也の目の色が変わった。
「仕方ないわね。今日はもう帰るわ。北里さん、貴女のせいでこんなことになったんだから、このジャケットは返さないわよ! 」
プイッとして、美也はその場から去って行った。
宇宙はとりあえずホッとした。
「春山さんは、色々問題を起こしているようだな。他の部署からも、春山さんについては色々と上がってきている」
デスクに戻った空斗は、パソコンのデーターを見た。