副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
定時になり。
今日は仕事が押して、涼花も帰りは定時を過ぎて18時を過ぎていた。
オフィスビルから涼花が出てくると。
「お嬢様」
以前、涼花に丁寧な対応をしていた運転手がいた。
驚いている涼花に、運転手は優しい笑みを向けた。
「突然申し訳ございません。旦那様が、ちょっと待ちきれないようです。ぜひ、お嬢様の彼にお会いしたいと申されまして」
「あ、そう言えば。忘れていました。…今日ですか? 話したいのは」
「はい。今日は、旦那様も一緒に来られておりますので」
止まっている車を見ると。
スーッと窓が開いて、秀臣が顔を出した。
「叔父様…」
やぁと、手を振る秀臣。
涼花はオフィスビルを見上げた。
宇宙はまだ仕事に追われていた。
今日は帰りが遅くなりそうだと言っていた。
どうしよう…。
そう思った時。
「あれ? 北里さん? 」
声がしてお振り向くと、そこには郷がいた。
「おや? 」
運転手を見て、車を見た郷。
秀臣と目と目が合うと…
「あれ? あの人。東条財閥のかたですね? 北里さんのお知合いですか? 」
「あ…えっと…」
答えに詰まってしまった涼花を見て、郷はクスッと笑った。
「やはり北里さんって、お嬢様だったのですね? すごく気品のある人なので、そうじゃないかって思っていました」
「お嬢様ではありませんが…」
「安心して下さい。誰にも言ったりしませんから」
言われても構わないかもしれないけど、今騒がれるのはちょっと控えたい気がする…。
「ちょっとご挨拶してきますね」
そう言って、郷は秀臣の下へ歩み寄って行った。
車に乗ったまま、秀臣と郷が話している。
初めて合ったはずなのに、親しげに話している秀臣と郷を涼花は分からないなりに不思議と見ていた。