副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
「ねぇ、北里さん。今度、家に遊びに来てくれないか? 」
「社長の家ですか? 」
「ああ、嫌かな? 」
「そんな…私なんかが遊びに行くなんて…」
「北里さんとは、仕事以外でもプライベートでも親しくしたいと思ているんだ」
「どうしてですか? 」
「いや、なんとなくだよ。我が家にも娘がいるのだが、ずっと海外に行って帰ってこないからね。なんとなく女の子が遊びに来てくれると、妻も喜ぶと思うんだ」
「それなら、私じゃなくてもいいと思いますが…」
「仲良くなりたいと思うことは、いけないかな? 」
仲良くなりたい…
(私達は、家族になりたい。仲良くしたいと思っているんだよ。もうそろそろ、心を開いてくれないかな? )
(私、娘が帰ってきてようで嬉しいの。一緒に暮らしてくれて、感謝しているのよ)
優しい声をかけられても素直に受け入れられなかった。
こんな私の事…無理して認めているだけって思い込んでいた…。
ふと、思いだされた過去の記憶。
最近よく思い出される…
今まで忘れているばかりで、こんなに思い出す事はなかったのに…どうしてだろう?
空斗の声がとても優しくて心地よく感じる事が、涼花には不思議だった。
「考えておきますね…」
ちょっと曖昧な返事をした涼花。
そんな涼花の返事でも、空斗は嬉しく感じた。
もう一度オフィスビルの外に涼花が出てきたのは、20時を過ぎた頃だった。
「遅くまで突き合わせてしまって、すまなかったね」
「いえ、こちらこそご馳走になってしまってすみませんでした」
「これに懲りずに、また付き合ってくれるかい? 」
「あ…えっと…。お昼のランチなら、いいです…」
少しドギマギする目で答えた涼花が可愛くて、空斗はクスッとわらった。
「そうだね。こんなおじさんと、夜に一緒にいると勘違いされてしまうからな」
「い、いえそうではありません…。社長を待っている、奥様の下に早く帰ってほしいからです」
「そっか。優しいんだね、北里さんは」
「そんな事は…」
空斗と涼花が話していると、オフィスビルから宇宙が出てきた。