副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
ちょうど宇宙があがってくる頃に、グラタンが出来上がっていた。
「お? なんかうまそうな匂いがするなぁ」
食卓に用意されているグラタンを見ると、宇宙の目が子供のように嬉しそうにほころんだ。
「グラタン久しぶり! 俺、グラタン大好物なんだ」
グラタンの横にはふんわりとしたロールパンが置いてあった。
「ロールパンだ! 頂きます」
まるで子供のように喜んで食べ始める宇宙を見て、涼花はとても嬉しい気持ちになっていた。
日頃シレっとしているような、ちょっと小悪魔な感じだけど。
子供のように喜んでグラタンを食べているなんて。
こんな姿を見れるのは私だけ?
そう思うと素直に嬉しくて。
涼花の表情も穏やかになっていた。
宇宙が食べている間に、涼花はお風呂に入る事にした。
今日一日で何となく疲れた涼花だが、気分は楽になっているのを感じた。
今まで分からない事ばかりで真っ暗で、ずっと闇の中を歩いているようだった。
だが最近では昔の事と思われることを、思い出すことが多くなっていた。
思い出すと辛い気持ちが込みあがってくるが、でも闇を感じるよりはマシだと思った。
空斗と2人で過ごした時間の中で。
きっと昔話したのだろうと思われる会話も思い出され。
未だに鮮明に覚えている。
今まですぐに忘れてしまい、何かを言っていたとしても何を言ったのか思い出せなくて怖かった。
最近はそれがなくなったことに気づいた涼花。
その夜は、宇宙からくっついてきて。
そのまままた愛し合うことになった。
「俺、あんたといっぱいセックスしたいって思ているんだ」
「え? 」
額をくっつけて、宇宙はちょっと意地悪そうに微笑んだ。
「だって。ずっと、させてくれなかったんだぜ。結婚して半年経過した時に、やっと初めてできたんだ」
「嘘…だって…確か、初めての夜に…寝ている間にそうなったて言っていませんでしたか? 」
「ああ、あの事。まだカミングアウトしてなかったな」
「カミングアウト? 」
「黙って、アンタを無理やり寝ている間に連れて来た時だろう? あの時は、シテなかったんだ」
はぁ?
驚いた半面、ちょっと怒った目を向けた涼花。
「ごめん、ごめん。そう言わないと、アンタがな得しないからさぁ。でも、服を脱がせたのは俺じゃないんだぜ。アンタが寝ているのに、暑いってって言いだして脱いでしまたんだからさっ」
「私が? 」
「そっ。俺は止めようとしたんだけど、寝ぼけているアンタは強くてさぁ。ささっと、服を脱いでしまって。布団をかけても、蹴飛ばすし。仕方ないから、俺が体で温めていただけって事」
嘘…私、自分で脱いでいたの?
恥ずかしくなり、涼花は赤くなった。