副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
「…今日は、その話を聞かせてくれるか? 慌てなくていいから…ちゃんと、あんたの過去の事も知っておきたい。何を聞いても、俺の気持ちは絶対に変わらないから安心しろ」
こくりと頷いた涼花。
「嬉しいよ。あんたがちゃんと、話してくれる気になったから。…ちょっと待っててくれるか? 俺も、あんたのご両親にお参りさせてほしいから。あんたを産んで、立派に育ってくれたご両親には感謝しかない。来るのが遅くなったが、ちゃんとお参りさせてもらえるか? 」
「…はい…」
宇宙は涼花から離れ、お墓に手を合わせた。
綺麗な菊の花が生けてあるのを見て、その花からなんとなく暖かさととても強い怒りを感じた。
涼花が生けたものではないが、誰が持ってきたのだろう?
まだ新しい花のようだが…。
宇宙は菊の花から、どこか重たいエネルギーを感じた。
「さっ、帰ろう。ここからバスよりタクシーがいいだろう」
涼花の手を引いて歩き出した宇宙。
そんな宇宙と涼花を、遠目で見ていた郷がいた。
「跡を着けてくるなんて、反則じゃないのかな? 」
いつもとは違う、ちょっと見下した目をして郷は宇宙と涼花を見ていた。
そのまま北条家のお墓の前にやって来た郷。
「叔父さん、叔母さん。…風香さんの事、あの男に任せてもいいのですか? …もうすぐ、3人の内、2人が消えますよ。楽しみにしていて下さいね…」
口元でそっと微笑んだ郷。
「相手もさんざん利用してきた人ですからね、こちらも利用させてもらいましたよ。彼女の妄想をね」
少し痛い笑みを浮かべて、郷は夜空を見上げた。
「…ちゃんと仇はとるから…」
そう呟いた郷は、深い悲しみに満ちた目をしていた…。