副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
「ちょっと、やめて下さい! 」
突き放そうとする涼花だが、郷の力強くて突き放せなかった。
「涼花さん、思い出して下さい。僕はずっと、貴女を見ていたんですよ。あの階段で、妹と同じ亡くなり方をしてほしくなくて必死でした。…貴女を突き落とした人を、僕は知っている。そいつ等は、僕の妹を殺した奴等だから…」
嘘…まさか…。
「涼花さん…いいえ…本当の名前は風香さん。…僕を見て下さい。僕がずっと、風香さんを見て来たんです。宗田ホールディングにまた入社してきた時もずっと見ていましたよ。なんで、社長秘書になんてなるのか心配でした」
驚いて茫然となった涼花の顎を、そっととった郷…。
「僕は、絶対に風香さんの事を悲しませたりしませんから。…あんな冷たい階段に、風香さんをずっと放置になんて絶対にしませんから」
郷に何かを言われても、涼花は驚きのあまり何も考えられなくなり、茫然と見ていた…。
「風香さん…好きです…。貴女を護ります、僕の命を懸けても…」
ゆっくりと郷の顔が近づいてきた…。
茫然となってしまった涼花は何も状況が把握できず、そのまま固まっていた…。
郷の唇が涼花の唇に触れる…その寸前!
「あれ? 篠山君? なにをしているんだい? こんな所で」
声がして、ハッとなり郷が振り向くと。
そこには空斗がいた。
「し、社長…」
空斗を見て、郷はサッと涼花から離れた。
「ん? 北里さん、ちょうどよかった探していたんだよ」
空斗の声に、涼花はハッと我を取り戻した。
「会議用の資料を急ぎで作ってほしいんだ。一緒に来てくれないか? 」
「あ…はい…」
ちょっと曖昧な返事をして、涼花は立ち上がった。
少し郷を気に止めながら、涼花は空斗と一緒に去って行った。
「…社長が現れるなんて…」
悔しそうな顔をして、郷も去って行った…。